M&Aの方法に関して、今回は会社分割と合併の概要について説明をします。

会社分割は、会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割し、他の会社(既存会社あるいは新設会社)に承継させるものです。会社分割は分割対象となる権利義務が包括して承継されることから、先に述べた事業譲渡のように個々の契約当事者との合意を行う必要がありませんので、手続きの煩雑性を避けると共に、重要な契約についての承継もスムーズに行うことができるというメリットがあります。また、負債の切り離しが可能であり、優良な部分のみを承継させることも出来ますし、特別決議で行えるため3分の2を集めることが出来るのであれば、株式の分散が生じている場合にも行えるというメリットがあります。

他方、会社法上の手続きをミスなく行う必要があることや債権者保護手続等のオープンな方法によって行う必要があるというデメリットもありますので、債権者や株主の意向、取引先の性質などを見ながら、手続きが途中で頓挫しないかを見極めながら行う必要があります。

合併は、既存の会社に一方の会社が吸収されてその会社が消滅する吸収合併と当事者となる会社が全て消滅して新設の会社を作る新設合併がありますが、いずれも消滅会社の権利義務を包括的に承継する手続きです。合併は、有機的につながった組織や外部との契約をそのまま活かしつつ、規模を大きくすることが出来るというスケールメリットを得られることもできますし、適格合併の要件を満たす場合には、税務上のメリットを受けることも出来ます。また、株式譲渡や事業譲渡と異なり、既存ないし新設会社の株式を交付することが出来るため、譲渡対価としての現金を準備しなくてよいというメリットがあります。

他方、合併も株主総会や債権者保護手続によって手続きがオープンになるデメリットはありますし、また、権利義務が包括的に承継されることのデメリットとして、マイナス財産も一緒に引き継がれることになりますので、潜在的な債務(未払残業代や第三者への損害賠償義務、簿外債務など)も承継してしまうことになります。そのため、実務的には、詳細なデューデリジェンスを行ってもなお重大な潜在リスクの回避が難しい場合には、事業譲渡の手続きに切り替えるという場面も多くあります。