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デメリットの「不表示」と優良誤認表示

Q 商品やサービスに関して、デメリット(マイナス面)を敢えて表示しなかったときに優良誤認表示になる場合はありますか。

■優良誤認表示とは

景品表示法第5条第1号は、

事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。

具体的には、①商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり②競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に該当します(「優良誤認とは」消費者庁HP)。

■デメリットの「不表示」が優良誤認表示となるか

上記のとおり、景品表示法は、不当表示という一定の行為があった場合に、これを事後的に規制しているのであって、事業者に一定の表示義務を課し、これが満たされなかったことを規制対象としているわけではありません(西川康一編「景品表示法第6版」69頁参照)。

そうすると、デメリット(マイナス面)を表示しないという不作為は、原則として景品表示法の規制対象となるわけではありません。

しかし、消費者に対してメリットをもたらすと同時に、消費者が通常知り得ないデメリットもある場合には事業者がデメリットとなる事項を適切に表示しないことにより、一般消費者に誤認される場合には、優良誤認表示に該当するおそれがあります(同書69頁から70頁)。

具体的には、「表示を義務付けられており、又は通常表示されている事項であって、主張する長所と不離一体の関係にある短所について、これを殊更表示しなかったり、明りょうに表示しなかったりするような場合には、商品全体の機能、効用等について一般消費者に誤認を与えるので、不当表示となるおそれがある」とされています(比較広告ガイドライン5⑶)。

実際に、建築基準法の規定による制限を受け、新築、改築、増築ができないにもかかわらず、その旨を(ビラに)記載しなかったことが、あたかもその利用について何らの制限もないかのように表示したものとして排除命令が出された事案があります(昭和57年(排)第8号)。

このような事案に照らせば、「従来の製品よりも電気の使用量が少なく節電になる一方で、耐久性が低く頻繁に修理や買い替えが必要になる場合」、「相場より廉価でコンサートチケットを購入できるが、立見席で舞台からも非常に遠い席である場合」など、メリットとデメリットが表裏の関係にあるようなケースでは、デメリットについても明確に明示しておくのが望ましいと思われます。

宮崎勇樹

アソシエイト弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大阪府守口市出身
平成20年 大阪府立牧野高等学校  卒業
平成24年 関西大学 文学部 総合人文学科 インターディパートメント・ヒューマンサイエンス専修 卒業
平成28年 関西大学大学院法務研究科(法科大学院) 修了
令和2年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所 入所

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