広告

比較広告

競争事業者の商品よりも、自社の商品の性能・品質などが優れていると表示する場合に、注意すべき点はありますか?

1 景品表示法上の問題点
景品表示法第5条は、自己の供給する商品又は役務の取引について、実際のもの又は競争事業者のものよりも、著しく優良又は著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を不当表示として禁止しています。
したがって、競争事業者との 比較が合理的な根拠に基づいておらず 、その結果として一般消費者が、競争事業者の商品よりも著しく有利又は著しく優良であると誤認するような表示であれば、不当表示に該当するおそれがあります。
そして、「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(改正平成28.4.1 消費者庁)によると、比較広告が不当表示とならないようにするためには、次の3つの要件を全て満たす必要があるとされています。

① 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
② 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
③ 比較の方法が公正であること

2 実務上のポイント
⑴ ➀比較広告で主張されている内容が客観的に実証されていること
ア 比較広告で主張されている内容について、客観的に実証されている必要があります。
 例えば、「昨年、A県内では、競争事業者△会社のテレビよりも、自社のテレビの方がよく売れた」  
 と主張する場合には、㋐昨年の、㋑A県内における、㋒テレビの販売数は、㋓競争事業者△会社より 
 も自社の方が多い、ことを実証しなければなりません。
イ 実証の方法および程度
 実証の方法は、㋐比較する商品等の特性について確立された方法(例えば、自動車の燃費効率につい
 ては、10モード法)がある場合には当該確立された方法によって、㋑それがない場合には社会通念
 上及び経験則上妥当と考えられる方法(例えば、無作為抽出法で相当数のサンプルを選んで、作為が
 生じないように考慮して行う調査方法)によって、主張しようとする事実が存在すると認識できる程
 度まで、行われている必要があるとされています。
 また、公的機関が公表している数値や事実及び比較対象商品等を供給する事業者がパンフレット等で
 公表し、かつ、客観的に信頼できると認められる数値や事実については、当該数値や事実を実証され
 ているものとして取り扱うことができるとされています。

⑵ ②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
ア ㋐実証されている事実の範囲内で引用すること、㋑調査結果の一部を引用する場合には、調査結果
 の趣旨に沿って引用すること、が必要になります。
 ㋐との関係でいえば、例えば、「昨年度における、A県内での車の販売実績」について調査したに過
 ぎないのに、「毎年、A県内での車の販売実績が一位」などと表示する場合や、「スポーツカーの販
 売実績」を調査したのみであるのに、「車の販売実績が一位である」と表示する場合には、不当表示
 に該当するおそれがあります。
 ㋑との関係でいえば、例えば、各社の商品について、比較アンケート調査を行い、複数の項目を質問
 しているにも関わらず、その中から自社商品の評価が高いものだけを恣意的に抜き出して、自社の商
 品が最も優れていると主張するような場合には、不当表示に該当するおそれがあります。
イ また、ある調査結果を引用して比較する場合には、一般消費者が調査結果を正確に認識することが
 できるようにするため、調査機関、調査時点、調査場所等の調査方法に関するデータを広告中に表示
 することが適当であるとされています。

⑶ ③比較の方法が公正であること
「比較の方法が公正」であるかは、㋐表示事項(比較項目)の選択基準、㋑比較の対象となる商品等の選択基準、㋒短所の表示を考慮要素として判断されます。
一般的には、どのような事項と比較していたとしても問題とはなりません。
しかし、特定の事項のみを比較し、その結果をもって、あたかも自社の商品全体の機能、効能が他の競争事業者の商品と比べて優れているかのように表示する場合(㋐)、グレード・ランクの異なるもの同士を比較しているにもかかわらず、あたかも同等のグレード・ランクの商品を比較した結果、自社の商品が優れていると表示する場合(㋑)、自社の土地が競争事業者の土地より安いのは、自社の土地に法律上の制限が課せられていることが理由であるのに、これを明瞭に表示しない場合(㋒)、などのケースでは、「比較の方法が公正」ではないとして、不当表示に該当するおそれがあるとされています。

以上、「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(S62.4.21公正取引委員会事務局、改正平成28.4.1 消費者庁)参照
※不正競争防止法2条1項15号

濱永健太

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大分県出身
平成12年 大分県立宇佐高等学校卒業
平成16年 岡山大学法学部法学科卒業
平成20年 立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了
平成21年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成27年 同事務所のパートナーに就任(現職)

関連記事

カテゴリー

アーカイブ