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二重価格表示

連休セールに合わせて、「通常○○円 ⇒ セール価格△△円!!」のような表記を行いたいと思うのですが、このような広告をする場合に、何か注意すべき点はありますか?

1 二重価格表示
ご質問のような表記は「二重価格表示」と呼ばれるものですが、「二重価格表示」とは、自己の販売価格の安さを強調するために、事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格を併記して表示することを言います。ご質問のような表記を行う場合には、以下の点についてご注意ください。

2 二重価格が不当表示に該当するおそれのあるケース
「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)は、二重価格表示として下記5つの類型を示しています。

(1)同一ではない商品の価格を比較対照とする二重価格表示(第4.1)
(例)
新品の壺と、中古品の壺を比較するような場合や、旧型と新型の価格を比較する場合など
(ポイント)
「同一の商品」での比較を行い、新品と中古、旧型と新型など、そもそもの前提条件が異なった上での比較にならないように注意してください。

(2)過去・将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示

ア 過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
(例)
1200円⇒980円!」
(ポイント)
最近相当期間価格(=最近相当期間にわたって販売されていた価格)を比較対照価格とする二重価格表示であれば、不当表示には該当しないと考えられています。

具体的な対応としては、以下の3要件を満たすようにしてください。

➀比較対照価格で販売されていた全期間が、直近8週間(当該商品が販売されていた期間が8週間未満の場合には、当該8週間未満の期間)において、過半を占めていたこと
②当該比較対照価格で販売されていた期間が通算して2週間以上であること
③二重価格表示を行う時点において、比較対照価格で販売されていた最後の日から2週間以上経過していないこと

イ 将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
(例)
「開店セール!通常1000円の商品を今だけ798円!」
(ポイント)
将来の販売価格に十分な根拠が必要です。したがって、実際に販売することのない価格や、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないときなどは、不当表示に該当するおそれがありますので注意が必要です。上記のような表示を行う場合には、開店セールの終了後、相当期間は1000円で当該商品を販売することが必要になります。

※タイムサービスは、高い方の価格で実際に売却しているのであれば、二重価格による不当表示には該当しないものとされています。もっとも、実際に販売されたことのない高額な販売価格を「当店通常価格」などと表示する場合には、不当表示になりますので注意が必要です。

(3)希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示
(例)
㋱12000円⇒9800円」
(ポイント)
希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合、➀製造業者等が、独立した立場で希望小売価格を定めていること、②希望小売価格が、製造業者等によってあらかじめ公表されていること、が必要です。架空のメーカー希望価格を記載したり、実際のメーカー希望価格よりも高い価格を表示したりする場合には、不当表示に該当するおそれがあります。

(4)競争事業者の販売価格を比較対照価格とする二重販売表示
(例)
「A電化製品店 15000円 ⇒ 当店 13500円!!」
(ポイント)
市場や特定の競争事業者の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合には、➀競争事業者の最近時の販売価格を正確に調査するとともに、②特定の競争事業者の販売価格と比較する場合には、当該競争事業者の名称を明示する必要があります。
競争者(市場)の最近時の価格を比較対照価格として表示しなければならない点はご注意ください。

(5)他の顧客向けの販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
(例)
「非組合員価格3000円 ⇒ 組合員価格 2500円!!」
(ポイント)
他の顧客向けの販売商品を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合、それぞれの販売価格が適用される顧客の条件の内容等について、実際と異なる表示や、曖昧な表示を行ったときは、不当表示に該当するおそれがあります。
上記のような虚偽・曖昧な表示以外にも、お正月のリゾート地宿泊価格のように、限定的に値段が吊り上げられる販売価格を「標準価格」のように表示して比較する場合や、適用場面が極めて限られる価格を比較対照価格として表示することも妥当ではないと考えられています。
この点についても、併せてご注意ください。

その他につきましては、【「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)消費者庁】についてもご参照ください。

濱永健太

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大分県出身
平成12年 大分県立宇佐高等学校卒業
平成16年 岡山大学法学部法学科卒業
平成20年 立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了
平成21年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成27年 同事務所のパートナーに就任(現職)

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