労務

出張時の労働時間

【相談】
当社では、営業部の従業員が出張する機会が多いのですが、タイムカードで管理できないので、午前9時から午後6時まで(休憩1時間)の所定労働時間で処理しています。このような処理は許されるのでしょうか。また、どこまでが労働時間になるのでしょうか。

【回答】

出張の際など、出退勤をタイムカードで打刻できない場合であっても、労働者の労働時間の管理をしなくてよいわけではありません。
このような場合においても、労働者から申告してもらうなどして、労働時間を特定する必要があります。

では、どこまでが労働時間に含まれるかですが、出張の際の移動時間については、通勤の場合と同様に考えることができ、会社の指揮命令下にはないと考えられますので、基本的に労働時間には当たりません。他方で、移動中に上司と業務内容の打合せ等を行っている場合には、会社の指揮命令下において業務を行っていると考えられますので、労働時間に含まれることになります。

このように、移動時間は基本的には労働時間には含まれませんが、所定労働時間内の移動時間については、上記と同様に考えることはできません。これは、会社の業務として出張に出ていますので、いわゆる「ノーワーク・ノーペイの原則」を適用して労働者に不利益を転嫁させることは妥当ではないからです。そのため、所定労働時間内で移動があった場合については、指揮命令下にあるとはいえないときであっても、原則として、賃金を支払わなければならないと考えられています。

また、出張先で残業が発生した場合であっても、社内で残業している場合と同様に、残業代を支払わなければなりません。いつまで残業しているかについては、終業時刻をメールや日報等で報告してもらうほか、取引先等に送ったメール等によって確認することも考えられます。現在では、様々な勤怠管理システムがありますので、そのようなシステムを導入することも労務管理においては有用といえます。

とはいえ、どこまでを労働時間として処理するかは、具体的な事案をもとに判断する必要がありますので、労働法に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

江崎辰典

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
佐賀県出身
平成14年 三養基高等学校卒業
平成18年 立命館大学法学部卒業
平成20年 立命館大学大学院法務研究科法曹養成専攻修了
平成22年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成29年 同事務所のパートナーに就任(現職)

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