相続

相続手続きを放置したことによるデメリット

相続手続きを放置してしまった場合は、どのようなデメリットを被ることになるのでしょうか。今回は、相続手続きを放置したことによるデメリットについて説明させていただきます。

①相続手続きを放置してしまうケース

相続が発生し、遺産分割協議が必要だとわかっていても、仕事が忙しかったり、複雑な手続きに戸惑ってしまったりして、相続手続きを放置してしまうケースが一定数存在していることは事実です。また、遺産分割協議が放置され続けた結果、所有者不明土地などが発生してしまうという問題も社会問題化しているところです。

本コラムでは、相続手続きを放置した場合に相続人がどのような不利益を被るのか、という点について解説していきます。

②相続放棄や限定承認ができなくなる

遺産について、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きい場合などには、相続人は、相続をしないことを選択することができます(民法938条)し、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認(民法922条)という方法も用意されてはいます。

これらについては、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に申述しなければならないという期限制限(民法915条1項)がありますので、相続手続きを放置してしまうと、回避することができたマイナスの遺産相続を回避できなくなる、ということになってしまいます。

③相続税の申告期限の経過

相続税は、基礎控除を超える額の相続があった場合には、相続人の死亡の翌日から10か月以内に申告する必要がありますので、相続手続きを放置してしまうと、こちらの申告期限を徒過してしまうことになります。その場合には、無申告加算税や延滞税などのペナルティーが課される場合もあります。

④相続関係の複雑化

遺産分割協議は、相続権を有する相続人全員で行う必要がありますが、相続手続きを放置してしまうと、その間に、相続人が死亡した場合、その相続人の相続権は死亡した相続人の相続人に移ってしまいます(数次相続といわれます。)。これが繰り返されますと、遺産分割協議の当事者が多数になってしまうばかりか、当事者同士がお互い顔も名前も連絡先も知らない状態にもなり得、遺産分割協議を行うのに大変な労力がかかってしまうことになります。

⑤相続登記の義務化(未施行)

現時点では、相続登記は義務とされておりませんが、2024年4月1日よりこれが義務化されます。不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられ、正当な理由のない申請漏れには過料10万円以下の罰則も規定されています。注意すべきは、2024年4月1日より前に発生した相続についても登記義務を負う点です。そのため、過去の相続についても、施行日あるいは不動産の取得を知ったときから3年以内に登記を行う必要があります。

⑥まとめ

このように、相続手続きの放置には多くのデメリットがありますので、速やかに取り掛かるべきでしょう。手続きが複雑で戸惑っている方に関しては、一度、弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

三島大樹

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
兵庫県出身
平成18年 私立高槻高等学校卒業
平成23年 京都大学法学部卒業
平成25年 京都大学法学研究科法曹養成専攻卒業
平成26年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
令和 3年 同事務所のパートナーに就任(現職)

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