労務

割増賃金の算定基礎について

【相談】

 当社では病院を経営しておりますが、患者様の緊急時対応などのため、スタッフに宿直をお願いすることがあります。その際、「宿直手当」を別途支払っていますが、この手当について、割増賃金の算定基礎となる賃金から除外して計算することは可能でしょうか。

【回答】

 割増賃金については、「通常の労働時間又は労働日の賃金」の計算額の25%以上50%以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した金額を支払わなければならないものとされています(労基法37条1項)。そして、この割増賃金の計算から除外できる賃金は、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金とされています(同条5項)。厚生労働省令で定めている賃金は、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類です。

そうすると、「宿直手当」については、以上の除外可能な賃金の種類に含まれておらず、割増賃金の算定基礎となる賃金から除外して計算することができないということになりそうです。

しかし、割増賃金の算定基礎となる賃金は「通常の労働時間又は労働日の賃金」とされているところ、「宿直手当」は所定労働時間を超えて宿直した際に支払われる対価であって、所定労働時間の勤務分に対する対価ではありません。そのため、「通常の労働時間又は労働日の賃金」に該当しないことになります。

 したがいまして、宿直した際に支払われる「宿直手当」については、割増賃金の算定基礎となる賃金から除外して計算することが可能です(なお、宿直が労働基準監督署の許可を得て行われた場合には、宿直分の割増賃金を支払う必要はありません。)。

 このように、割増賃金の算定基礎となる賃金から除外することができる賃金は、原則として厚生労働省令で定める7種類の賃金に限られることになりますが、支給される手当の性質次第では「通常の労働時間又は労働日の賃金」に該当せず、例外的に割増賃金の算定基礎となる賃金から除外できるものもあります。具体的な手当の性質を踏まえての微妙な判断にもなり得るところですので、迷われた際には弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

江崎辰典

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
佐賀県出身
平成14年 三養基高等学校卒業
平成18年 立命館大学法学部卒業
平成20年 立命館大学大学院法務研究科法曹養成専攻修了
平成22年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成29年 同事務所のパートナーに就任(現職)

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