ベンチャー企業と株主総会

ベンチャー企業として法人設立する際に、組織形態として株式会社を選択されることが多いです。株式会社という組織形態を選択した場合には、その機関として、株主総会を必ず設置する必要があります。

1 株主総会の役割

株主総会は、株式会社における最上位の意思決定を行う場であり、非常に重要な機関です。会社の基本的なルールである定款を変更するにも株主総会における特別決議が必要になりますし、新しく株式を発行するなどして資金調達を行うにあたっても株主総会決議は不可欠です。特に、取締役会非設置会社では、会社法第296条第1項で「株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項」と規定されている通り、株式会社に関する一切の事項について決議することができるとされています。

2 ベンチャー企業における株主総会

 代表取締役である起業家1名が全ての株式を保有しているようなケース(一人会社と呼ばれます。)であれば、起業家自身が株主であり、株主総会の存在を特に意識せずに会社運営がなされていることも多く、招集手続の省略も可能であって、問題となることも少ないです。

 しかしながら、会社法上は株主総会に関し様々な規定(招集手続・議事録等)が設けられており、当該手続を履践する必要があり、エンジェル投資家やVC等の第三者が株主に加わった場合には、株主総会の招集手続等の各種手続が適式に履践されているかを確認されることになります。

また、株主との間で投資契約や株主間契約において、会社法上の義務を加重するような規定(特定の事項につき株主総会を開催する前に事前に書面承諾を得ることを要求するような条項等)が存在することも多く、さらに、ベンチャー企業の資金調達においてよく用いられる種類株式を発行している場合には、種類株主総会の開催の要否も検討する必要があります(たとえば、A種種類株式を発行している場合には、株主総会、普通株式の種類株主総会、A種種類株式の株主総会の3種類の株主総会のそれぞれの要否を確認する必要があります。)。

上記の通り、株式を用いて資金調達を行うベンチャー企業における株主総会運営は一般の企業に比べ複雑なものとなることが多いです。

3 手続の遵守

株主総会の手続は会社法上要請されるものですので、ベンチャー企業としても当然に遵守する必要があります。IPOやM&AによりEXITすることを検討する際にも、会社法上の手続について違反がないかは当然審査されるものです。手続違反が原因で、IPOを進めるにあたり支障になることもあり得ますので、専門家の関与のもとで、早い段階から適式な手続を履践することが必要です。

吉田尚平

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
京都府出身
平成15年 洛南高等学校卒業
平成19年 大阪大学法学部卒業
平成21年 立命館大学法科大学院法務研究科法曹養成専攻修了
平成23年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成30年 同事務所のパートナーに就任(現職)

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