ベンチャー

共同創業の留意点

株式会社を設立して、起業しよう!と考える方、とりわけベンチャー起業家においては、同じ志を持つ仲間と一緒に起業しようと考え、会社設立の際に、共同創業者同士で株式を持ち合う場合があります。しかし、以下に述べる通り、何らの対策もなくそのようなことをしてしまうと後に重大な支障が生じることがありますので注意が必要です。

1 株式を持つとは?

株式とは、いわずもがな株式会社の細分化された持分であり、株式会社の重要事項を決定する株主総会において株主の持株比率に応じて議決権が与えられます。例えば、取締役を選任する際には株主総会の出席株主の議決権の過半数の賛成が必要となりますし、さらに重要な合併等の組織再編行為では、通常の場合、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。

このことだけでも、持株比率が株式会社の経営にとって極めて重要であることは明らかですし、ベンチャー企業にとってもそれは同じことです。創業者が、持株比率について安易に考えてしまうと、会社の運営に重大な支障が生じることになります。さらに、他人が所有する株式は、創業者にとって不都合になったからと言って簡単に排除できるものでもありません。

2 共同創業者による株式の持ち合い

起業時に、創業者が100%の株式を所有するのがもっとも安全かつ一般的ですが、友人など信頼できる仲間複数人で創業する場合もあり、その際には、創業者同士で株式を持ち合うこともよくあります。当然、創業者それぞれが相応のリスクを背負って起業するわけですから、だれか一人が株式をすべて保有するのではなく、創業者同士で株式を持ち合ったとしても何ら責められることではありません。

もっとも、共同創業者同士であっても方向性の違いなどから、途中で経営から離脱することがありますし、それ自体は自然なことです。円満な別れ方であれば問題ありませんが、悲しいことにそれがケンカ別れの場合もあります。そのような場合に、離脱する共同創業者の株式をどのように取り扱うかを事前に定めておかなければ、会社運営に支障が生じかねません。

そこで、共同創業者同士で株式の持ち合いをする場合には共同創業者の離脱時の株式の取り扱いを規律するために創業株主間契約を締結しておくことが望ましいです。

3 創業株主間契約

ここでは、契約の詳細については省略いたしますが、創業株主間契約で規定される主な内容は以下の通りです。

①共同創業者が会社の役員、従業員を辞めた際には、他の共同創業者又は他の共同創業者が指名する第三者が持分の全部又は一部を買い取ることができること

②①の買取価格(金額や金額の算定方法(算定式や算定基準)を定めておくことが考えられます)

上記に加えて、③離脱した共同創業者の競業の禁止も規定される場合があります。

主な内容は上記の通りですが創業株主間契約の内容が一義的に決まっているわけではありませんので、その詳細については専門家に相談されるのが良いかと思います。

こうした事前の契約をしておくことにより、離脱した元共同創業者が株式を保有したままという事態が防げるのです。

中島和也

アソシエイト弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大阪府出身
平成20年 石川県立金沢錦丘高校 卒業
平成24年 私立関西大学法学部法学政治学科 卒業
平成26年 大阪大学大学院高等司法研究科 修了
平成28年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
令和2年 上場IT企業法務部において企業内弁護士として勤務
令和3年 弁護士法人飛翔法律事務所復帰

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