企業が他社と取引を行う際、自社の重要な情報を開示しなければならない場面があります。このような場合に活用されるのが秘密保持契約(NDA: Non-Disclosure Agreement)です。
1 NDAとは?
NDAとは、事業活動の中で知り得た相手方の情報を第三者に漏らさないことを約束する契約です。スタートアップやベンチャー企業にとっても、他社との連携・交渉において機密情報の保護は重要であり、NDAは非常に重要な役割を果たします。
2 NDAが活用される主な場面
スタートアップやベンチャー企業において、以下のようなシーンでNDAが締結されることが一般的です。
(1)外部業者への業務委託
(2)大企業との共同開発
(3)新規事業提案や業務提携に関する協議
(4)VC(ベンチャーキャピタル)などからの資金調達検討 など
特に、重要な技術や戦略が開示される可能性があるため、あらかじめNDAを締結しておくことで情報を保護する必要があります。
3 NDA締結時に注意すべきポイント
NDAは多くの企業でひな形が用意されていますが、その内容は契約の目的や相手によって適切に調整することが重要です。特に注意すべきポイントとして以下の3点を挙げています。
(1)秘密情報の定義
契約上の「秘密情報」の範囲に、保護したい情報が含まれているかを確認しましょう。口頭での開示に関する扱いも明記されている必要があります。
(2)使用目的の特定
開示された情報が、特定の目的の範囲内でしか使用されないことが明確になっているかを確認します。
(3)秘密保持義務の期限
契約終了後も秘密保持義務がどれだけの期間続くのかを確認しましょう。情報の性質に応じて、適切な保持期間を検討することが重要です。
4 実務での対応
NDAは一般的に双務契約(双方に義務がある契約)として締結されるため、相手だけでなく自社側の義務にも注意が必要です。特に、実際の取引内容と照らし合わせて、各条項の整合性やバランスを確認し、必要に応じて修正交渉を行いましょう。
5 まとめ
スタートアップ・ベンチャー企業にとって、情報は重要な資産です。適切なNDAの締結によって、その資産を守る体制を整えることは、事業成長の基盤を築くうえで欠かせません。他社のひな形を活用するケースもありますが、まずは自社のNDAひな形を持ちつつ、個別のケースに応じて内容を見直す体制を整えておくことが望ましいと言えるでしょう。