広告

表示行為主体性

Q:広告の作成を他社に委託したいと考えているのですが、委託先の作成した広告について、当社が景品表示法上の責任を問われることはあるのでしょうか。

1 総論
景品表示法(以下「景表法」といいます。)5条柱書では、同条1号から3号に定める「表示をしてはならない」と規定しており、同条は不当表示という作為(表示行為)を禁止しています。
そうだとすれば、広告の作成を委託した場合、広告を作成したのは委託先の事業者であることから、委託元の事業者自身は、不当表示行為を行っていないのではないか?という疑問が生じます。
もっとも、自ら広告の作成を第三者に委託しておきながら、「私達が広告を作成したわけではないため、当社は不当表示を行っていない!どのような表現でも責任は負わないはずだ!」という言い訳が通るのでしょうか。

2 裁判所の見解
この点、東京高判平成20年5月23日(ベイクルーズ事件)が、広告の表示主体性の判断について、一般的な見解を示しています(消費者庁も同様の立場になっていると思われます。)。

(事案の概要)
㈱ベイクルーズは、八木通商が輸入したGTA社製とされるズボン(以下「本商品」という。)を購入して、これを自社のセレクトショップで、一般消費者向けに販売していた。
八木通商は、㈱ベイクルーズに対し、本商品が実際はルーマニアで縫製されたもの(ルーマニアが原産国)であったにもかかわらず、「イタリア製」であると説明した。
㈱ベイクルーズは、八木通商の説明に基づいて、本商品がイタリア製であると認識し、同社に対して、「イタリア製」と記載したタグ等を作成させ、このようなタグのついた本商品を自社のセレクトショップで販売した。

(裁判所の見解)
裁判所は、景表法上の不当表示を行った者に該当するかは、当該不当表示についてその内容の「決定に関与」したかによって決定されるという見解を示しています。
そして、「決定に関与」とは、➀「自ら若しくは他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合」のみならず、②「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合」や、③「他の者にその決定を委ねた場合」も含まれるものとし、「当該決定関与者の故意又は過失があることを要しない」としています。

以上の裁判例の見解に照らすと、➀自ら若しくは他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合、②他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合、③他の者にその決定を委ねた場合、には、委託元の故意又は過失を問うことなく、景表法上の表示主体性が認められることになります。

3 対策案
上記のとおり、不当表示の内容の「決定に関与」したものとして、景表法上の表示主体性と判断される範囲は極めて広いです。
自ら又は第三者と「共同して」広告を作成した場合や、委託先からの説明に基づいて広告内容を決定した場合(自らの表現に関する判断は介在しなくても)に限らず、自ら広告内容を決定できたにもかかわらず、第三者に広告内容の決定を委ねた場合であっても、不当表示の内容の「決定に関与」したものとして、表示主体性が認められることになります。

したがって、第三者に広告の作成を委託する場合には、その内容について委託元で必ずチェック・修正する機会を確保してください。
具体的には、業務委託契約を締結する際、➀広告の作成にあたっては、法令やガイドライン、監督省庁の指導内容などを遵守すること、②広告を作成した後、委託元で内容の確認を行うこと、③委託元が、広告の内容に不当表示等(レピュテーションリスクを含みます。)があると判断した場合には、委託先に対して内容の修正を要求できること、などを契約書において規定しておくのがよいと思います。

広告の作成を継続的に外部に委託する場合(特にアフィリエイト等、委託先が多くなる場合)には、社内で広告管理(チェック)部門や広告管理基準(NGワード集など)を設けるなどの対策を講じるとともに、必要に応じて外部専門家を利用する(広告規制に精通した弁護士等)ことも有益でしょう。

濱永健太

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
大分県出身
平成12年 大分県立宇佐高等学校卒業
平成16年 岡山大学法学部法学科卒業
平成20年 立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了
平成21年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成27年 同事務所のパートナーに就任(現職)

関連記事

カテゴリー

アーカイブ