遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、その中でも自筆で作成する自筆証書遺言は、公証人の費用をかけず、また、証人も不要ですので一人で作成できるメリットがあります。その反面、作成においての形式面での要件が細かく決められており(民法968条)、一つでも失敗してしまうと無効となってしまうリスクがあります。
自筆証書遺言が無効になる場合としてよく見受けられるものは以下のものです。
①自筆(自書)が必要な部分について自筆(自書)で書いていない。
遺言書については全文、日付及び氏名を自分自身の自筆(自書)で作成することが必要です。長文になったり、相続財産が多い場合には、ついパソコンを用いて作成することを考えられるかもしれませんが、自筆証書遺言の場合では無効となります。
もっとも、民法改正によって、自筆証書と一体となるものとして登記簿謄本や通帳のコピーを財産目録の代わりに添付することが認められるようになりました。また、財産目録についてはパソコン等で作成することも認められました。
但し、この場合であっても各ページ(両面印刷の場合は両面に)に署名(自書)と押印が必要である点は注意が必要です(民法968条2項)。
②日付の記載がない、又は、日付があいまい。
自筆証書遺言書の中には日付を記載する必要がありますが(民法968条1項)、日付を忘れてしまっている遺言書があります。また、「令和3年12月吉日」などと記載されており、「日にち」が記載されていない場合もあります。自身の最後の意思ですので、「吉日」に作成したと表現したい気持ちがあったのかと思いますが、複数遺言が存在する場合は作成日時の先後でどちらが優先するか判断される非常に重要な要素であるため、日付については年月だけでなく「日にち」まで明確に記載しなければならず、これが特定できない遺言は無効となってしまいます。
そのため、「令和3年12月31日」などのように「日にち」まで明確に記載しましょう。
なお、「令和3年12月末日」は「令和3年12月31日」と特定できるので有効です。
③署名や押印がない。
署名についても、例えば、遺言書を入れた封筒に記載はされているものの、遺言書本文に記載のないものもあります。このような自筆証書遺言を有効とした裁判例もありますが、例外的なものですので、必ず遺言書本文に自筆で(本人が)署名を行うようにしてください。
また、押印(捺印)も必須ですが、必ずしも実印である必要はなく、認め印でも有効となります。但し、偽造を防止するために実印で押印することをお勧めしています。