労務

有期雇用契約について

【相談】

 当社にはこれまで従業員として正社員しか在籍していませんでしたが、今般、パートやアルバイトなどの雇用期間を限定した従業員を採用しようと考えています。この場合、正社員との契約と異なり、法的に注意しておくべき点はあるでしょうか。

【回答】

 正社員は、雇用期間の定めのない雇用契約を締結している従業員ですが、パートやアルバイトなどは、雇用期間が定められていることが多く、このように雇用期間を定めた雇用契約のことを一般的に有期雇用契約と呼んでいます。パートやアルバイトなどの従業員であっても、本人が有期雇用契約と思っていないことも少なくなく、それだけに、雇用契約の終了時にトラブルが生じることが多いものです。これは一般的に「雇止め」の問題と呼ばれます。

有期雇用で契約をする際には、契約を締結する際に、更新の有無、更新をする際の判断基準を明示しなければなりませんが、契約終了時のトラブルを防止する観点からは、契約書において、原則として期間満了によって契約が終了し退職となることを明確に定めておき、仮に更新をする場合にはその判断基準を規定し、可能な限り更新回数の上限を設定しておくべきです(これは、更新を重ねて通算契約期間が5年を超えた労働者から申込みがあった場合に無期契約に転換されるというルールとの兼合いでも重要なポイントとなります。)。

 その上で、契約を更新する場合には、基準に従った判断過程を明確にするだけでなく、本人の意思確認も行い、改めて契約書を作成することが重要です。契約書を作成するなどの個別対応がなされず、漫然と契約が自動更新されているようなケースも散見されますが、いざ契約を終了させるときにトラブルの元になりますので、必ず契約書を作成するようにしましょう。

 他方、雇用契約を更新しない場合には、解雇と同じハードル(客観的合理的理由、社会通念上の相当性)が課される場合があることにも留意した上で、基準に従った判断過程を明確にし、労働者からの求めがあれば雇止めの理由を明示しなければなりません。なお、一定の有期契約(3回以上更新されているか、1年間継続して雇用されている場合)の更新をしない場合には、少なくとも期間満了の30日前までにその予告をしなければならないことに留意が必要です。この点は見落としがちなところですので、覚えておくようにしましょう。

 社会情勢の変化に応じて有期雇用契約の例は増加し、これに比例して発生するトラブルも多くなっているのが実情です。トラブルを未然に防止するという観点からも、万一発生してしまったトラブルを早期かつ適切に処理するという観点からも、経験豊富な弁護士に相談されるのがよいでしょう。

江崎辰典

パートナー弁護士 大阪弁護士会所属

略歴
佐賀県出身
平成14年 三養基高等学校卒業
平成18年 立命館大学法学部卒業
平成20年 立命館大学大学院法務研究科法曹養成専攻修了
平成22年 弁護士登録・弁護士法人飛翔法律事務所入所
平成29年 同事務所のパートナーに就任(現職)

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